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−−なぜ三味線奏者になられたんですか?

祖父の代から3代続く長唄の家系なんですよ。記憶はないんですが、稽古を始めたのは、6歳の6月でした。昔から6月6日にお稽古を始めると上達するって言いますよね。

子供の頃は、自分の意志もなにもなくて、ただ言われるままにやっていたという感じでしょうか。でも、中学生の頃には「もうやめる!」なんて言った事もありますよ(笑)。家での稽古に加えて、月4回は外の稽古に行ってましたから、遊ぶ時間がほしくて。

だいたい、その頃は周りの友人たちにも、三味線をやっているなんて言いませんでした。今でこそ「渋いね」なんて言ってもらうこともありますが、中高生の頃、周りで三味線をやってる友達などいませんし。「かっこいい」ことだという感じではありませんでしたからね。

でも、やめることもなく続けていて、高校生ぐらいから、休みの日に踊りの会などにちょこちょこ出演するようになりました。やはり、父も祖父も長唄の世界におりましたから、自然とこの道に入って続けてきた、という気がします。むしろ、「サラリーマンになる」と言い出すほうが、私にとってはかなりの決断だと(笑)。

−−お稽古は厳しかったのでしょうか?

もちろん、演奏や礼儀については厳しいこともありました。趣味でやる分には、厳しく叱られるなんてことはないのですが、仕事としてやっていくには、やはり大変なこともたくさんありますよ。公演が重なってくると曲を覚えるのが大変です。時には20番ほどをすべて暗譜しなくてはなりませんし、これがまた一番一番が長い!(笑)

長唄の世界にも色々と流派があり、杵屋(杵勝)というのも屋号のひとつです。この杵屋は長唄の世界でも大きいほうの流派なんですが、歌舞伎などの公演では、ほかの流派の人とも一緒に演奏するんです。そうすると、同じ曲でもちょこちょこ手が違ったりするわけなんですよ。タテ(主席奏者)にあわせますから、その練習もなかなかに大変です。


●音の魅力、かえがたい喜び。

うちのお稽古では唄も三味線もどちらも教えていますが、舞台では唄と三味線のどちらかを専門にするんですね。私は三味線の音色が好きだったので、三味線を専門に選びました。

私にとって三味線は、あまりにもずっと身近にあったものなので、あってあたりまえになっているし、どこが好きなのかと考えることもないぐらいです(笑)。でも、改めてどこが好きなのかと言われると、やはり音が好きなんですね。それにやはり、いい演奏ができたときの満足感はなにものにも変えがたいんですよ。

−−と、ここで三味線の音色を聞かせていただきました。「では。」と、きちんと正座してすっと背筋を伸ばした杵屋さんが、ぽろりんと三味線を爪弾き始めると、一瞬で空気が透き通ります。瞬く間に異次元に連れて行かれるような魅力的な音色に、しばし時を忘れて聞き惚れ…、「とまあ、こんなところです。」という言葉で、ようやく我に返りました。杵屋さん…、どれぐらいお稽古すれば、少しぐらい弾けるようになるんでしょうか…。

短い曲ならば、半年も練習すれば弾けるようになりますよ。
長唄の楽譜は五線譜にも書けるんですが、通常はこんな長唄の楽譜を使います。(画像↓)


ぜんぜんわかりませんか?(笑)馴れると簡単なんですよ。三本の弦に対応しているだけですから。最初のうちは、この楽譜の読み方や三味線の持ち方から少しずつ練習します。

三味線って、昔はどこの家にもあった楽器です。今でこそ見たこともないという方も多いんでしょうが…。演奏するのに力がいるような楽器ではないので、女性でも、力の弱い方でも弾けるんですよ。

うちにお稽古に来ている方の中には、初心者もたくさんいらっしゃいます。年齢層も、年配の方から若い方まで幅広く。なかなか馴染みのない楽器かもしれませんが、一度手にとって、音色を聞いてみていただければと思います。

−−終始、柔和な面持ちの杵屋さんだったが、正座して三味線を持った時には、すっと表情が変わった。背筋を伸ばし、凛乎として楽器に向かうその様子は、日本の伝統文化や思想にそのままつながる姿勢。そして感情を直に突き動かすような音色もまた、日本文化の側面かもしれないな……そんなことを考える、ちょっと不思議な時間だった。

奥が深〜い日本の文化、あなたもちょっとのぞいてみてはいかが?

杵屋正人さんのウェブサイト
http://www.hpmix.com/home/masatokineya/


お稽古は月2〜4回のコース
三味線は貸し出しOK